東京大学名誉教授
小林寛道氏の
アミノ酸研究紹介
本ページでは、小林寛道氏のアミノ酸研究内容を紹介します。
※本ページで紹介する研究内容は、一般的な学術的知見を示すものであり、TOKYO CONDITIONの効果効能を示すものではありません。
研究テーマ
アミノ酸混合物が、エキセントリック収縮トレーニング中/後の筋疲労からの回復に与える影響
故・石井直方氏、小林寛道氏等による研究です
(左:故・石井直方氏、右:小林寛道氏)
エキセントリック運動の筋力回復に、アミノ酸混合物はどんな影響があるのか?
エキセントリック運動(伸張性筋収縮:筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する運動)は、筋力向上に有効であるが、筋線維や結合組織への負荷(負担)が大きく、筋肉痛を生じやすく、運動後に筋力が低下し、回復に時間がかかることが知られている。
これらの変化には、筋原線維の断裂や、筋内の細胞膜・筋形質膜・カルシウム代謝の乱れなどが関係すると報告されている。
一方、アミノ酸摂取に関する先行研究では、複数のアミノ酸を組み合わせて摂取した場合、運動時の代謝パラメータに変化が見られることが示されている。
本研究では、アミノ酸混合物の摂取がエキセントリック運動実施後の筋力発揮状態にどのように関わるかを検討した。
12種アミノ酸混合物を用いた筋力発揮と回復過程に関する実験
対象は、T大学の男子大学生22名。研究は二重盲検クロスオーバーデザインで行われた。
【期間】
10日間 × 2回(2ヶ月間隔)
【介入】
①12種類のアミノ酸を含む混合アミノ酸(1回5.6g、1日2回、朝、夕に摂取)
②プラセボ(アミノ酸を含まず、麦芽糖・ビタミン等を配合)
【最大筋力の測定と運動負荷】
等速性筋力測定装置を用いて、肘関節のアイソメトリック(等尺性)・コンセントリック(短縮性)・エキセントリック(伸張性)の最大筋力測定をおこなった。
運動負荷として、肘関節の屈曲動作と伸展動作でのエキセントリック運動を角速度60度/秒、角度30~105度の範囲の条件下で、最大努力で8往復(屈曲・伸展)を1セットとして3分間の休息をはさみ3セット(合計24回)行った。
【最大筋力の測定タイミング】
運動前、エキセントリック運動負荷直後, 1,2, 3, 5, 6, 10日後に実施。
筋力はピークトルク値として計測され、統計解析には対応のあるt検定が用いられた。
実験結果
● 運動当日の最大筋力の低下
エキセントリック運動直後には、最大筋力の低下が生じたが、アミノ酸群とプラセボ群間で大きな差は見られなかった。
● 運動後〜10日間の変化
最大筋力は、エキセントリック運動後、プラセボ群では2日後に最低値となり回復傾向を示したが、アミノ酸群では1日後に最低値となり、その後回復に向かう傾向を示した。
肘屈曲筋(flexor)では、プラセボ群とアミノ酸群間で統計的な差はみられなかった。肘伸展筋(extensor)では、等尺性筋力および他の筋力指標において、回復期の2~6日目の値がアミノ酸群でプラセボ群を上回る様子が観察された。
考察
エキセントリック運動後の筋力低下は、筋線維の構造的変化や代謝の乱れが関与することが知られている。アミノ酸は、これらの予防や回復にかかわる機能を持つことが期待されることから、本研究を実施した。
本研究では、12種類のアミノ酸を含む混合物を摂取したところ、肘伸展筋の筋力指標において、運動後の変化にプラセボ群との違いが観察された。エキセントリック運動にともなう筋組織への影響は、多岐の要素を持つと考えられることから、単一のアミノ酸ではなく、複数種のアミノ酸配合が良いのではないかという考え方に基づき、本研究ではアミノ酸混合物を用いた。運動後の筋力発揮状況に対して、アミノ酸混合物は一定の影響を及ぼす可能性が示唆された。ただし、肘屈曲筋ではプラセボ群との差はみられなかったことから、今後、より多くの対象者や異なる運動条件での検証が必要であると考えられる。
参照:
Effect of a Selected Amino Acid Mixture on the Recovery from Muscle Fatigue during and after Eccentric Contraction Exercise Training
Masaaki SUGITA、Masaru OHTANI、Naokata ISHII、Kimiaki MARUYAMA、Kando KOBAYASHI
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, Volume 67, Issue 2
2003/1/1